AI駆動PM(プロジェクトマネージメント)を実現する――これは、プロジェクトマネージャーの業務を劇的に変える挑戦です。
従来のプロジェクト管理ではドキュメント作成やスケジュール作成、リスク検知といった定型業務に多くの時間が費やされてきました。これらに対してAIを活用することで作業時間を大幅に効率化し、PMが本来集中すべき「意思決定」や「ステークホルダーとの調整」などにより多くの時間を割けるようになります。
本記事では、CursorやCodexを用いてPMBOK準拠のAI駆動PMを実現する実践方法をハンズオン形式で詳しく解説します。AI駆動PMの基本概念から具体的な環境構築手順、実務での活用例まで、入門編として必要な情報を網羅的に共有します。
※本記事ではPM=プロジェクトマネージメント(PdMではなくPjM)として執筆しています。
AI駆動PM(プロジェクトマネージメント)とは?
AI駆動PM(AI-driven Project Management)はAIをPM業務に活用してPMをサポートし、業務効率化を図り、プロジェクト推進を効率的に高クオリティで行う手法です。
PMはAIにプロジェクト計画から実行・監視・コントロール・終結までを一貫してサポートしてもらいます。
そしてドキュメント生成やリスク検知を効率化することでPMは意思決定やステークホルダーの調整など、人間にしかできない業務に集中できる環境を作ります。
この記事で実践するハンズオン
この記事を最後まで通して実践すると以下が可能になります。
①議事録を元に要件定義書を作成
②リスク登録簿 生成
③定例MTGアジェンダ 生成
④PMBOK準拠のプロジェクト推進アシスト
また、この手法を習得することで上記ドキュメント以外にも様々なドキュメント(プロジェクト憲章、ステークホルダー登録簿、品質マネジメント計画書など)の自動生成が可能になります。
CursorによるAI駆動PM環境構築
ここではCursorを例にとって説明します。Codexでも同じ設定で実現可能なので適宜、読み替えて頂けたらと思います。
Cursorはご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的にはAIで開発業務を効率化するAIコーディング アシスタントです。
つまり、基本的にはITエンジニアが利用するツールなのですが、最近では経営企画やマーケティング、ライティング業務など様々な業務で利用するユースケースが現れています。その中でプロジェクトマネージメントにも活用可能なので、本記事ではその実践方法を詳しく解説します。
設定の流れは以下の3 Stepです
① Cursorをインストール
② Settings → 「Privacy Mode」をON(モデルへの学習を防ぐ設定)
③ スターターフォルダをローカルPCに配置
順番に解説します。
① Cursorをインストール
Cursorの公式サイトからダウンロードしてインストールします。
Cursor: AIで最高のコーディング体験驚異的な生産性を引き出すために設計されたCursorは、AIとともにコードを書く最良の方法です。cursor.com
インストールしてこの画面になればOKです

右上のPaneアイコンをクリックしてAIチャット、ファイルエクスプローラー、ターミナルを表示します。

ここまで来たら次のステップに移ります。
② Settings → 「Privacy Mode」をON(モデルへの学習を防ぐ設定)
メニューから「Cursor」→「基本設定」→「Cursor Settings」→検索ボックスに「privacy mode」と入力

「Privacy Mode」を選択し、スイッチをONに設定します。
この設定を有効にすると、Cursorがプロンプト内容をAIモデルの学習データとして送信しなくなります。
つまり、あなたのプロジェクト情報や機密データがAIの学習に利用されることを防ぐためのプライバシー保護設定です。
企業としての利用やクライアント案件など、機密性の高いコードを扱う際には必ずこのモードをONにしておくことを推奨します。
③スターターフォルダをローカルPCに配置
以下のGitHubにアクセスします。
https://github.com/MasahiroOkamura-MAC/AI-driven-Project-Management/tree/main
Gitを使える方:Cloneするかダウンロードしてローカルに配置してください
Git環境がない方:「Download ZIP」でフォルダをダウンロードしてください

ダウンロードしたZipファイルを解凍してCursorから「フォルダーを開く」を選択します。

「.cursor」フォルダ、「AGENTS.md」、「ECサイト開発案件」フォルダが表示されていればOKです。
- 「.cursor」フォルダ:Cursorコマンドを利用するためのファイル
- 「AGENTS.md」:AIエージェントの振る舞いを設定するファイル。ここでPMBOK準拠のPMとして振る舞うように設定している。
- 「ECサイト開発案件」:ハンズオンで利用するデモ案件用のフォルダ。サンプルの議事録が格納されています。

また、AIチャットにスラッシュ「/」を打ち込むことでコマンドが表示されることを確認します。

これでAI駆動PMを行う準備完了です!
次のステップではいよいよAI駆動PMを実践してみましょう。
ハンズオン:AI駆動PMを実際に動かす
環境が整ったら、いよいよ実践です。
AI駆動PMはCursorのAIチャットでプロンプトを実行することで動作します。
①議事録を元に要件定義書を作成
AIチャット欄に「/」を打ち込み、要件定義書を作成するコマンドを選択します。

次にサンプルの「議事録.txt」をAIチャットにドラック&ドロップします。
これで議事録を考慮して要件定義書を生成してくれるようになります。

コマンドの全体としては以下の形です。(/コマンドと@のファイル参照が色が変わっていて認識されているかご確認ください)
/aipjm/02_planning/07_要件定義書
@議事録.txt を元に生成して

AIの処理が終わるとdocsフォルダ内に「要件定義書.md」が生成されます。
議事録を反映した要件定義書が一瞬で生成されます。

見事にドラフト版を生成してくれましたが完璧なものはないので人の目でチェックして修正を加えます。
②リスク登録簿 生成
同じようにリスク登録簿も生成可能です。AIチャットに「/」を打ち込んでリスク登録簿を選択します。

要件定義書を作成した時と同じように要件定義書と議事録をコンテキストとして指定します。

AIの作業が終わるとリスク登録簿が生成されます。

こちらも要件定義書と同様に人の目でチェックして修正していきます。
③定例MTGアジェンダ生成
要件定義書などと同じように以下のようにプロンプトを設定します。

AIの処理が完了するとアジェンダが完成します。

皆様お気づきかと思いますがスラッシュコマンド「/」で項目が出てくるドキュメントは全てこの方法で生成可能です!
適宜、議事録や要件定義書などコンテキストを加えて生成すると精度が高いドキュメントが出力されるので色々お試しください。
④PMBOK準拠のプロジェクト推進アシスト
PMをやっているとトラブルに直面する機会は多いと思います。
そんな時、AI駆動PMでは気兼ねなく相談できます。
納期が遅れている。どう対応するべきか?
クライアントと開発スコープの認識がズレている。どう対応するべき?
必要に応じて議事録を添付したり、状況を詳しく記述するとより解像度の高いアドバイスをもらえます。
アドバイス内容はPMBOK準拠で資格保有者であれば既知の内容ではあるのですが、もれなく網羅的にアドバイスしてくれるので抜けていた視点を補完してくれて私も業務で何度も助けられました。
【コラム】必ずしもPMBOK準拠にする必要はないという話
ここまでPMBOK準拠を押し出してきましたが、実際のプロジェクトではフレキシブルに対応することが求められます。
これまでの成果物を見て「長いな」「不要なものが多い」と感じた方も多いと思います。
その為、CommandファイルやAGENTS.mdを修正したり、以下のようなプロンプトでAI駆動PMする方が効果的な場合も往々にしてあります。各社・各自で最適解を探っていく必要があります。
@議事録 これが前回の議事録です。以下フォーマットで明日の定例MTGのアジェンダを生成して
{ここに各社 最適化された議事録テンプレを記載}
【まとめ】AIとPMの協働が「新しい標準」になる
AI駆動PMは現状、全てのPM業務をAIが代替するものではありません。
AIが生成した成果物を人が確認することが必須です。
それでもドキュメントのドラフトを生成してくれたり、PJのトラブルについてアドバイスをもらうことでPM業務を大きく効率化してくれます。
まだまだ過渡期ではありますが、今後はAI駆動PMがIT業界のみならず全ての業界のスタンダードになると私たちは考えています。
【次回予告】MCPでコンテキストを追加する
AIが正しく判断・提案するために最も重要なものは何か?
答えは「コンテキスト」です。
今回は議事録が.txtファイルで存在する想定でハンズオンしましたが、実際にはGoogle DriveやNotionなどで管理されている企業様も多いのではないでしょうか?
そのような外部リソースとの連携を行うことが出来る仕組みが「MCP」です。
MCPサーバーに対応しているツール(Google Drive、Notion、Jira、Asanaなど)と連携することで多様なコンテキストをAIに与えてさらに精度が高いAI駆動PMが可能になります。
例えばJiraやAsanaのようなプロジェクト管理ツールと連携することでスケジュールの進捗をAIが把握できるようになるのでAI駆動PMとしてカバー出来る範囲が飛躍的に増えます。
もし要望が多ければ、次回はMCPサーバーを利用したAI駆動PM(プロジェクトマネージメント)について執筆しようと思います。
【宣伝】
株式会社MAKE A CHANGEではAI駆動PM(プロジェクトマネージメント)の推進を行っています。
既存ツール(Cursor、Codex、Notion AIなど)を生かしたAI駆動PMの導入はもちろん、それらで補えない部分をカバーする「独自のAI駆動PMツール」の開発も行っており個社カスタマイズにも対応しております。
ご興味ありましたらぜひお気軽にご相談ください。
ホームページのお問い合わせやXのDMやリプでも対応いたします。
